この記事でわかること
ウイルスは、生物と生物でないものの間にいる「生命体」です。
ヒトの免疫反応を刺激して発熱させたり、細胞をがん化させたりするものがあり、肝臓がんは8割から9割がウイルス感染によるものです。
ウイルスに対する治療薬開発の基礎研究を行う私の研究室では、ウイルスの遺伝子を解析して発症の原因となる遺伝子を見つけ、その働きを止める方法などを探っています。
「細胞レベルではこの化学物質が効きます」といったことを発見したら、医学部や製薬会社がその先を発展させていきます。新しい薬をつくり出す最初の部分を担っています。
※出典:株式会社栄美通信 2024年8月発行「大学×SDGs」
イラスト:内山 弘隆
他の生物を利用して子孫を増やすウイルスは、生物と生物でないものの間にいる「生命体」です。
ウイルスはやっかいで、一度入り込んだら取り除くことは非常に難しく、多くはそのまま感染した宿主に住み続けます。
ただし、宿主の生物が死なないように共生するため、私たちも感染したことを知らずに寿命を迎えたりします。
しかし一方で、ヒトの免疫反応を刺激して発熱させたり、時間をかけて細胞をがん化させたりするものがあり、肝臓がんは8割から9割がウイルス感染によるものです。
私の研究室では、ウイルスに対する治療薬開発の基礎研究を行っています。
ウイルスはヒトの細胞のなかに入るため、感染した細胞だけを破壊しなくてはなりません。研究では、ウイルスの遺伝子を解析して発症の原因となる遺伝子を見つけ、その働きを止める方法などを探っています。
ここでの基礎研究で、「細胞レベルではこの化学物質が効きます」といったことを発見したら、医学部や製薬会社がその先を発展させていきます。私たちは、新しい薬をつくり出す最初の部分を担っているわけです。
ウイルスは人類誕生の遥か以前から存在しますが、ウイルス学が進歩したのは電子顕微鏡が発明されてから100年足らずです。
昨今、遺伝子解析技術の発達は目覚ましく、日々、短時間で解析できるようになっています。
ウイルス感染症やがん、アレルギーといった治療が困難な病気に対して、遺伝子を利用して治療法を見つける可能性は大きく広がっています。