日本文学

文学のおもしろさは、学問領域を飛び出すダイナミズム!

國學院大學 文学部 日本文学科 野中 哲照 教授

この記事でわかること

私の専門は日本中世の軍記物語です。授業では「深読み」(掘り下げていくこと)にこだわり、新たな解釈を広げられるように武具甲冑をお見せすることもあります。私の研究人生の中で一番印象深い出来事は、文学(『延慶本 平家物語』)の研究をしながら、歴史学や人文地理学、さらには神話学へと論文が広がっていったことです。人間や社会の縮図である文学は、その周辺の学問すべてにかかわる総合学問であり、そこには領域をはみ出していく面白さやダイナミズムがあります。物語を分析して学ぶことは、人間や社会について考えることなのです。

専門分野の研究テーマは何ですか?

専門は『平家物語』『太平記』など日本中世の軍記物語です。平安時代の平将門の乱を扱った『将門記』から室町時代・戦国時代の軍記まで、1000種類以上の作品があると言われていて、その文学史的展開を追うことも研究テーマのひとつです。

授業でこだわっていることは?

一番こだわっているのは「深読み」です。「深読み」は掘り下げていくことであり、「あらすじを読む」「現代語訳をする」とは正反対で、現代語訳はゴールではなく「深読み」へのスタートです。
そのために授業では武具甲冑をお見せすることがあります。鎧や弓矢、刀、馬の鞍など、武具甲冑の詳細を知ることで、そこから新たな解釈が広がっていきます。

研究における象徴的な「エピソード」を教えてください。

『延慶本(えんぎょうぼん)平家物語』というひとつの平家物語の異本から、歴史学や神話学に学問が広がっていったことが、私の研究人生の中で一番印象深い出来事です。

『延慶本 平家物語』には、平清盛に刃向かったために島流しにされた人々の話が出てきます。その場所は鹿児島県の硫黄島で、薩摩の国・硫黄島が当時の日本の最果てであるといった表現が書かれているのです。
実際にフィールドワークで硫黄島に行ってみると、そこには黒潮が流れていて、フェリーの航海士の方が操縦に苦労されることがわかりました。そこから、古代日本人の国境意識というのは、黒潮による分断意識だということが見えてきたので、それをテーマに論文を1本書きました。これは文学を超えて歴史学や地理学、人文地理学という学問になると思います。

また、本には硫黄島の活火山「硫黄岳」についても書いています。硫黄岳に対して「鎮火してくれ」「静まってくれ」「治まってくれ」と願う火山信仰が出てくるので、私はそれをもとにいろいろ調べ、古代日本人の火山信仰についての論文も書きました。

『延慶本 平家物語』の文学研究をしながら歴史学や人文地理学、さらには神話学へと広がる経験をしました。

文学を学ぶ醍醐味とは?

文学研究の面白さは逸脱性、はみ出しだと思います。当時の人間や社会が出てくる文学は、それら周りの学問すべてにかかわる総合学問なのです。私の研究が人文地理学や神話学へと逸脱していったように、文学には領域をはみ出していく面白さやダイナミズムがあります(脱領域)。文学研究は「物語を机上で読む研究」と思われるかもしれませんが、現実に私がフィールドワークをしているように、非常にアクティブな側面を持っています。

文学は人間や社会の縮図です。実際にいる人間を写し取って物語の中に描いたり、社会の縮図として物語に投影したりします。物語を分析して学ぶことは、人間や社会について考えることなのです。

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