観光学

「宿」に秘められた過疎地再生の可能性

國學院大學 観光まちづくり学部 観光まちづくり学科 井門(いかど) 隆夫 教授

この記事でわかること

私の専門は、地方に点在する小規模な宿泊業の経営です。「人口が減るいまの経営のあり方」を考える中、今後は「過疎や限界集落における宿泊業の役割」について研究したいと思っています。たとえば、ベトナムでは古民家を宿にしたことで荒廃した棚田エリアがリゾート地になりました。また、カナダでは廃れた海辺のまちに建てた一泊25万円のホテルに、「この地域が再生するように」と世界中の人が泊まりに来ています。過疎地であっても宿ひとつで再生していく可能性があるのです。日本でそこを追求できないか、研究を進めたいと思います。

専門分野の研究テーマは何ですか?

私の専門は、地方に点在する小規模な宿泊業の経営です。「人口が減りつつあるいま、どのような経営のあり方があるだろうか」というようなことを研究しています。
研究で国内や海外を訪れていて、全国の小規模な旅館やゲストハウス、古民家の宿の経営者の方々と親しくさせていただいています。そのおかげもあり、宿泊施設でインターンシップをしたり働く経験をするなど、ゼミ生は観光学だけでなく社会人基礎力も養っています。

高校時代の興味関心は何でしたか?

理系だった私は、「大学で建築をやりたいな」とか「南極の昭和基地で医者として働きたいから医学部を目指そう」と思っていました。しかし、地理や歴史が一番好きでしたので、結果的に社会学を学ぶことを決めました。

それ以来、社会学の道を歩んでいるわけですが、受験の準備が遅かったため大学は一年浪人しました。それはそれでまた良い経験でした。一方で、大学に入ったら休学して留学するとか、大学院に行って専門性を追求するとか、そういうことにまで思いを及ばせることが高校時代にできたらもっと良かったかなと思っています。でも後悔はしていません。社会学をやって良かったと思っています。

研究してみたい「まち・地域」はありますか?

今後、本当に過疎と言われる地域、あるいは限界集落と言われる地域において、宿泊業が果たす役割について研究したいと思っています。
限界集落になったら宿泊業はいらないだろう、お客さんは来ないだろう、というのが一般論だと思います。しかし、ベトナムの荒廃した棚田エリアの古民家を外国資本が宿にしたところ、雇用が生まれただけでなく棚田で働く人も増えて、農業と観光が融合したリゾート地になりました。

また、カナダではタラ漁が廃れてしまった地域に地元の方がホテルを建てたことで人が集まりはじめました。そのホテルは一泊いくらだと思いますか?日本円で25万円です。そこを訪れる世界中の方々は、おそらく「その地域が再生してほしい」という寄付の気持ちで宿泊料をお支払いされているのだと思います。
過疎地であっても、限界集落であっても、宿をひとつ建てることによってその地が再生していく可能性があるのです。それを日本でも追求できないか、研究したいと思っています。

学部に期待してほしいことは何ですか?

これからの観光には地域のまちづくりが必要です。観光まちづくり学部には、さまざまなフィールドを持った先生が揃っていて、先生方のフィールドについて行くことができます。先生方のもとで全国各地、そして、世界でどのようなまちづくりがされているのか見ることができるのが、観光まちづくり学部の一番の魅力だと思います。

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