経済学

コロナ禍でも「恐慌」にならなかったのはなぜ?

日本大学 経済学部 兒玉 公一郎 教授

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この記事でわかること

「大恐慌」「雇用崩壊」「収入激減」といった言葉がビジネス系雑誌の表紙に並ぶなど、コロナ禍では当初、経済の先行きは非常に悲観的に見られていました。そのように懸念されていた事態を回避できた理由のひとつとして、国内企業が必死に自助努力し、供給を絶やさず、従業員の雇用も維持したことは無視できません。また、消費者も商品・サービスを求めました。企業の提供する商品・サービスが私たちの社会生活の隅々まで浸透していたという事実に目を向けると、日本社会における企業の存在の大きさがあらためて実感できるかもしれません。

コロナ禍において、経済の先行きは当初非常に悲観的に見られていましたが、結果的に大恐慌と呼ばれるような状況には至りませんでした。
なぜだったのでしょう?

表紙に並んだ「大恐慌」「雇用崩壊」「収入激減」

コロナ禍の最初の頃(2020年春過ぎ)を振り返ると、経済面での先行きについてかなり悲観的な見方も少なくありませんでした。たとえば、ビジネス系雑誌の表紙では「大恐慌」「雇用崩壊」「収入激減」などの、やや過激とも思われる言葉が並びました。
けれども、日本に限定してその後の経過を見ますと、コロナ禍前と比べて失業率が跳ね上がるとか、新卒学生の就職が著しく困難になるといった、当初喧伝されていたような極端に深刻な状況は今のところ観察されていません。

企業の自助努力と消費者の購買意欲で回避

懸念されていた事態が回避できた理由はいろいろ考えられますが、国内企業がコロナ抑制に配慮しながらも、供給を絶やさず、従業員の雇用も維持したことは無視できません。
そこには、グローバル・サプライチェーンが維持されたことや企業向けの公的支援の効果もあったのかもしれませんが、それ以上に個々の企業による必死の自助努力については強調しても良いでしょう。

また、経済活動に対してさまざまな面で半ば強制的なブレーキがかけられた状態が続いたにもかかわらず、企業の提供するさまざまな商品・サービスを、私たち消費者が求めたことも指摘できます。
つまり、コロナ禍だからといって需要が完全に消えてなくなったわけではないのです。
ここで浮き彫りになった、企業の提供する商品・サービスが私たちの社会生活の隅々まで浸透していたという当たり前の事実に目を向けると、日本社会における企業の存在の大きさがあらためて実感できるかもしれません。

実業人たちが発展させた日本経済

このような日本の企業システムをつくったのは、企業家と呼ばれるような実業人です。

明治以降の近代化や戦後の高度成長が典型的ですが、ご存知の通り、日本は世界が驚くほどの経済発展を成し遂げました。日本の経済発展を実動部隊として支えたのは民間ビジネスにほかならず、実業人がそれを先導したのです。
その筆頭格は渋沢栄一で、彼が設立に関与した企業は500社にも上ると言われ、その中には、よく知られた現存の企業のルーツになったものも少なくありません。

現代を生きる私たちは、そのような先人の仕事の延長線上に立っていると言えます。
近ごろは日本の将来を憂慮する声も少なくありませんが、昔の実業人がどんな風に企業を発展させてきたのかと思いを巡らすと、案外と未来志向の発想になるかもしれませんよ。

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