医学・歯学

ゲノムDNAに残された「しるし」からわかる、生活の記録とメッセージ

日本大学 歯学部 近藤 真啓 准教授

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この記事でわかること

災害などで亡くなられた方の身元を特定することは、法医学者の大切な任務のひとつです。私たちの研究室では、ゲノムDNAから「年齢」や「生前の生活習慣」を読み取りご遺体の身元を特定する、「エピジェネティクス」という考え方に基づいた新しい法医鑑定技術の開発に取り組んでいます。
最近では、児童虐待などの社会問題についても、この技術が、証明の手がかりになる可能性が見えてきました。この研究は、人の尊厳を守るために、科学(サイエンス)ができる新たな貢献のかたちだと考えています。

法医学の新たな可能性をひらく

近年、日本では地震や豪雨などの大規模災害が頻繁に発生し、多くの人命が失われています。亡くなられた方の身元を特定し、ご遺族のもとにお届けすることは、法医学者の大切な任務のひとつです。

私たちの研究室では、身元がわからないご遺体について、歯などに残されたゲノムDNAから「年齢」や「生前の生活習慣」を読み取り、そのご遺体が誰であったのかを推定する新しい法医鑑定技術の開発に取り組んでいます。

その鍵(キー)となるのが、「エピジェネティクス」という考え方です。

これは、遺伝子(DNA)の配列そのものを変えるのではなく、「メチル化」という"しるし"をつけることで、どの遺伝子がはたらくかを調節する仕組みのことを言います。この"しるし"は、年齢を重ねるに連れて、あるいは、喫煙や食生活などの生活習慣または生活環境の影響を受けて変化します。

DNAに残存しているこのような変化を読み取ることで、亡くなられた方の年齢や生活の痕跡を推定することが可能になるのです。

人間の尊厳を守る、科学(サイエンス)の新たな貢献

私たちは、最近、この「メチル化」の変化量を基準として、歯から採取したDNAから個体の年齢を推定するシステムを作り上げました。そして現在は、喫煙歴を推定するためのシステム開発に着手しています。

さらに最近では、種々のストレスや児童虐待などの社会問題についても、この技術が、証明の手がかりになる可能性が見えてきました。

とくに、子どもの頃に受けた虐待の証拠を、大人になってから証明するのは非常に難しいことですが、実験動物を用いた私たちの研究から、DNAのメチル化、さらに特定配列の変化が、そのような過去の出来事の「痕跡」としてゲノム内に残っている可能性があることがわかってきました。

私たちが進めているこれらの研究は、人の尊厳を守るために、科学(サイエンス)ができる新たな貢献のかたちだと考えています。

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