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この記事でわかること
認知症は認知機能が低下する症候群で、最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。脳の神経が変性して脳が委縮していく病気で、私は、そのメカニズムを解明することを目指しています。
この病気では機能を失って脱落する神経細胞に、タウと呼ばれるタンパク質の凝集・蓄積が見られますが、それはもともと健康な神経細胞にも普通にあるものです。そのため、タウには正常な状態と神経障害につながる異常な状態があると考えられています。
私は、この決定的な違いを見つけることが、タウを異常な状態に発展させないように抑制する治療薬の開発につながると考えています。
私の主な研究テーマは「認知症脳における神経変性メカニズムの解明」です。
認知症は、脳の病気や障害など、さまざまな原因によって認知機能が低下する病気で、最も多いのが「アルツハイマー型認知症」です。脳の神経が変性して脳が委縮していく病気ですが、そのメカニズムを解明することを目指しています。
神経細胞のタンパク質の異常に着目
アルツハイマー型認知症では、機能を失って脱落する神経細胞に、タウと呼ばれるタンパク質の凝集・蓄積が見られます。タウは、健康な神経細胞に普通にあるタンパク質です。そのため、タウには正常な状態と神経障害につながる異常な状態があると考えられています。
私は、この決定的な違いを見つけることが、タウを異常な状態に発展させないように抑制する治療薬の開発につながると考えています。
アルツハイマー病脳では、神経細胞内でタウが凝集・蓄積する(赤矢頭の黒い構造体)。こうなると神経細胞は機能を失う。
研究の世界的なトレンドは、一度できた病変がどのように広がっていくか、その広がりをどう抑制するか、です。大半の研究者は、そこに注力しています。私のように「タウの異常化の最初のステップ」を明らかにしようとする研究者は、非常に少ないと思います。
組織や細胞の構造は、薄くスライスすることで顕微鏡で観察できるようになる。
私はいま、この研究目標の達成に必要不可欠な新たな研究手法を作り上げているところです。
前人未踏の謎を解明するためには、新たな研究手法の確立が重要です。独創的なアイデアで独自の研究手法を確立できれば、成果はついてきます。そのため、どんなに時間をかけてでも完成を目指します。
難治性疾患の解明と治療法開発の王道「機能形態学」
機能形態学は、ヒトの体について解剖(=つくり)と生理(=はたらき)の双方から学びます。
私たちの体を構成する組織や細胞は、いずれも興味深い形であり、それぞれその機能を反映しています。一方、その複雑な構造や機能の破綻は健康障害として現れます。機能形態学は、健康障害の発症メカニズムを解明し薬の効果を理解するうえで、必要不可欠な学問領域なのです。
私たちは王道ともいえるアプローチで、認知症を筆頭にさまざまな難治性疾患の解明と治療法の開発を目指しています。みなさんにも、生命を支える構造と機能の美しい相関を一緒に探究してほしいと考えています。
薬学は物理、化学、生物を統合する学問で、学修がハードな分だけやりがいもある領域です。それらの知識をフルに活用して多くの人々の健康や生活に寄与する薬剤師は、人々の生活に「最も身近な科学者」でもあります。
尊い生業といえる薬学の道を、一人でも多くの方に歩んでほしいと願っています。
(出典:日本大学 薬学部 2025 SCHOOL OF PHARMACY)
(日本大学 薬学部HP)