社会心理学

未婚化・晩婚化の解決策を、社会心理学の視点で考えます

明治学院大学 社会学部 社会学科 鬼頭 美江 教授

この記事でわかること

マッチングアプリなど、多様な出会いの場での人々の心理や行動について、特にパートナーとの出会いや関係の形成・維持を促す要因に関する研究をしています。
婚活イベントに関する実証実験では、見た目と学歴が高い女性ほど、男性からより魅力的であると評価されていました。一方で、魅力度評価と性格特性などとの間に関連は見られませんでした。
未婚化・晩婚化の抑止に取り組むことは、人口減少や孤独・孤立の予防などに寄与する可能性があります。研究を通して、その人に合った出会いの場でパートナーを見つけられるように支援します。

日本では、「結婚を希望してはいるが、出会いの機会がない」「どうしていいか分からない」という人が大勢いることが明らかになっています。
なぜそうしたことが起きているのか? 私は、原因や対策を追求したいと考え、婚活やマッチングアプリに関する研究をスタートさせました。
個人の心理や行動と、文化や社会環境の影響の双方から、日本の状況を検討することが重要だと考えています。

外見と学歴は魅力度評価につながる?!

かつての日本では、お見合い結婚や職場結婚が主流でした。しかし、近年はさまざまなマッチングサービスを利用して婚活する人が増えています。
こども家庭庁の2024年の調査では、過去5年間に結婚した既婚者の25%が「マッチングアプリ」で出会ったと回答しました。また、自治体が婚活イベントを企画するなど、出会いの場は多様化しています。
そうした多様な出会いの場での人々の心理や行動について、特にパートナーとの出会いや関係の形成・維持を促す要因に関する研究を進めています。

婚活イベントに関する実証実験では、独身の男女に3分間対話してもらい、対話後に相手をどの程度魅力的だと思ったか、どの程度交際したいと思ったかを調査しました。
その結果、外見の魅力度と学歴が高い女性ほど、男性からより魅力的であると評価されていることが分かりましたが、魅力度評価と性格特性などとの間に関連は見られませんでした。
一方、女性からの魅力度評価では、はっきりとした関連が見られた男性側の要因は確認されませんでした。

日本における婚活イベントに関する実証研究はまだ始まったばかりです。今後も継続していく必要があります。

社会心理学的視点で見つける、未婚化・晩婚化対策の新たな糸口

社会的・経済的な要因を解決すれば未婚化・晩婚化が解消されるのかといえば、おそらくそうではなく、個人の行動や心理にも焦点を当てた社会心理学的視点からの研究も重要だと考えています。

つまり、雇用形態や収入の安定はもちろん大きな要因ではありますが、それだけではなく、独身者の個人特性や、初対面状況での行動にも注目して検討するということです。
「結婚を希望しているものの、どうしたらいいか分からない」と感じている人に対してきっかけやヒントを提示することができれば、未婚化・晩婚化対策の新たな糸口になるかもしれません。
また、個人特性に応じた出会いの場を科学的根拠に基づいて提案することができれば、出会いの場とのミスマッチによる婚活疲れや自信喪失を防ぎ、継続的な婚活を促進する一助になると考えられます。


未婚化・晩婚化の抑止に取り組むことは、人口減少や孤独・孤立の予防など、より広範な社会問題の解決にも寄与する可能性があります。
今後の研究を通して、結婚を希望する人がその人の特性に合った出会いの場で、自信を持って関係発展につながるパートナーを見つける支援ができるように力を尽くします。

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