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玉川大学が北海道に保有する実習・研究のフィールド「玉川大学弟子屈(てしかが)農場」では、在来種のカエデをつかったメープルシロップづくりに農学部の学生が取り組んでいます。
研究材料として2022年に本格的な樹液の採取を開始。研究で使われなかった樹液は地元の方に依頼してシロップにしていましたが、今年は学生たちが濃縮作業を行いました。
試作の過程では、樹液に含まれる天然成分が結晶化したメープルシュガーも現れ、最終的に約100リットルの樹液から2リットルのメープルシロップが完成。将来は販売できることをめざしています。
メープルシロップといえばカナダですが、近年は日本でも生産されていて、その量が増えていることをご存知でしたか?
カナダ産はサトウカエデが原料ですが、日本で使うのは古くから国内に生育するカエデ種。玉川大学農学部でも、イタヤカエデやハウチワカエデなどの在来種を使ってメープルシロップづくりに取り組んでいます。
その場所は、カナダに負けないほど寒さが厳しい北海道。
阿寒摩周国立公園のなかにある「玉川大学弟子屈(てしかが)農場」です。
冬から春先にかけて樹液を採取
弟子屈農場内には数種類のカエデが多数自生しています。
まだ雪深い2月、木々が春を待つ静かな森に学生たちは分け入りました。
イタヤカエデやハウチワカエデなどの幹に小さな穴を開けてホースを差し込むと、ゆっくりと樹液のしずくがペットボトルに落ちていきます。1本の木から採れる量はわずかですが、今年は採取場所を拡大したことで、約130kgの樹液を得ました。
この繊細なプロセスに、学生とともに3年前から取り組んでいるのは、農学部環境農学科の南佳典教授です。
教育や卒業研究を含めた研究材料として、2022年に本格的な樹液の採取を開始。それらを研究や実習に活用し、余剰樹液はメープルシロップを製造・販売する地元の方に濃縮してもらっていました。
今年は、学生たちが自ら濃縮を行いました。試作の過程では、樹液に含まれるミネラルなどの天然成分が結晶化したメープルシュガーも現れ、最終的に、約100リットルの樹液から2リットルの琥珀色のメープルシロップが完成。
口に含むと、じんわりと身体にしみこむような、まろやかでやさしい甘さで、ふわりと広がる木の香ばしさからは、カエデの生命力が伝わってきました。
カエデ樹液の一次煮詰め作業(左上)、一次煮詰め作業を経た濃縮樹液(右上)、最終煮詰め作業(左下)、完成直後のメープルシロップ(右下)
「まだ越えなければならないハードルはありますが、いつかこのシロップを、みなさんの手元に届けられるようにしていきたい」と語る南教授と学生たち。
今後も研究を継続して、販売・普及をめざします。
多種多様な動植物に触れながら教育研究を展開
弟子屈農場は、玉川大学が北海道に保有する実習・研究フィールドです。
環境、生態、畜産、作物など、幅広い農学的視点を現場で体験できるこの農場は、教室では得られない「手の記憶」を育ててくれます。
イタヤカエデなどの樹液採集は、その代表的な実践のひとつです。
木がなぜ糖を蓄え、なぜこの時期に樹液を流すのか。雪解け、気温、樹種、生態系との関係を肌で感じながら、その答えを追求します。
採集の手順そのものが、農と自然の深い関係を知るきっかけになっています。