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この記事でわかること
デジタルネイティブの新興企業が躍進した結果、私たちの生活の中にAI(人工知能)やデジタル技術が深く入り込み、その利便性を享受できるようになりました。私は、2017年から2018年に中国の広州に滞在し、デジタル経済で世界をリードする中国経済を研究しました。そこで目にしたのは、日本のはるか先をいくデジタルサービスや流通オペレーション、顧客体験の数々です。経済指標だけではわからない中国社会の仕組みや経済成長について、実際に生活して理解を深めたことで、日本の課題や将来進むべき道を解き明かすヒントを見つけることができました。
専門分野の研究テーマは何ですか?
私は、デジタル経済における顧客体験とマーケティングの進化について研究しています。人工知能をはじめとしたデジタルを駆使した商品やサービスは、従来のリアル社会を前提とした経済の常識を覆すとともに、顧客体験を刷新しました。心に触れる良質な顧客体験をどのようにデザイン・提供するか、機能的な差別化が難しくなった現在における体験価値のあり方について研究しています。
授業でこだわっていることは?
子どもの頃、自然の中で夢中になって遊んでいるうちに、生物や科学の知識を得るという経験をしたことがある方は多いと思います。「不思議だな」「なんでだろう」という素朴な疑問や好奇心が、学びへの意識を高めるのは大学生も一緒です。
私は、「体験」や「発見」を通して企業経営やマーケティングを学ぶ楽しさを感じ、そして本質を理解してほしいと思っています。そのために、企業人からビジネスのダイナミクスをダイレクトに伝えてもらうなど、産業界や社会とつながりのある授業を展開しています。実務における正解のない問いに向き合う機会は、座学では得られない満足感や達成感、そして主体的な学びの動機づけになっています。
どんなゼミナール・演習ですか?
テーマはマーケティングです。各学年25名ほどいる大人数のゼミナールで、4年次の卒業論文執筆まではグループワークが主体です。課題解決や課題発見に向けて、情報収集、整理、分析、討論、発表という一連の活動を通じて、学生一人ひとりが自らの行動やチームへの貢献を振り返ることを重視しています。
自身を客観視することは、自分に不足している能力やスキルに気づき、「それを補うにはどうしたらいいか」と考えることにつながります。マーケティングの専門知識に加え、主体性や協調性、忍耐力や向上心など「非認知能力」の涵養を通して一人ひとりが成長を実感できるゼミを心がけています。
研究における象徴的な「エピソード」を教えてください
2017年から2018年にかけて、中国・広州市の中山大学に訪問教授として滞在し、デジタル経済で世界をリードする中国経済の実態調査をおこないました。
現地で目にしたのは、日本のはるか先をいくデジタルサービスや流通オペレーション、顧客体験の数々です。以前から頻繁に中国を訪れていましたが、当時はデジタル経済が空前とも言える活況を呈していました。アメリカを超えて世界最大のEC(電子商取引)大国になったのもこの時期です。
滞在期間中、私はさまざまなシェアリングサービスの恩恵に預かったり、フードデリバリーでお気に入りの店舗の料理をいつでもどこにいても食べたり、(AIやIoTなど最新技術を活用した)スマート小売でオンラインとオフラインの垣根を超えた買い物体験などをしました。経済指標だけではわからない中国社会の仕組みや経済成長について、実際に生活をしながら理解を深めたことで、日本の課題や将来の進むべき道を解き明かすヒントを見つけることができました。その経験は、書籍『米中先進事例に学ぶ マーケティングDX』(すばる舎)にまとめています。