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日本大学文理学部生命科学科の「植物分子科学研究室(金研究室)」では、植物が光合成を調節する分子メカニズムを解明し、環境に適応する仕組みを探っています。
植物は光の強さに合わせて「光合成システム」をカスタマイズしていて、日差しが強い時は効率的に光を逃し、また「アンテナ」の数を減らして吸収量を調整しています。
この研究は、生物学や物理学にまたがる領域であり、生理遺伝学、生化学、生物物理学を専門とする他大学や国立研究所の研究者と連携しながら、学際的なアプローチで光合成の謎に迫っています。
眩しすぎる時、植物は光を逃している!
日本大学文理学部生命科学科の「植物分子科学研究室(金研究室)」は、2025年度に開設された新しい研究室です。
ここでは、植物が光合成を調節する分子メカニズムを解明し、環境に適応する仕組みを探る研究に取り組んでいます。
具体的には、「植物が変動する光環境にどう適応しているか」を分子レベルで捉えます。
たとえば、私たちは日差しが強い時、帽子やサングラスを着用したり、日陰に逃げたりしますよね。植物にとっても強すぎる光は細胞を破壊する「毒」になります。
そこで光が強すぎる時、植物は短期的には光を効率的に逃し、長期的には光を集める「アンテナ」の数を減らすことで、光の吸収量を調整しています。
自身の中にある「光合成システム」を光の強さに合わせて最適化しているのです。
この「集光システム」自体は40年前から研究されていて、重要なタンパク質(集光アンテナタンパク質)の存在も判明しています。しかし、それらがどう調整されているのか、詳しい分子メカニズムは未だ明らかにされていません。
そこを解明しようとする私たちの研究チームは、集光アンテナタンパク質のひとつである「LHCⅡ」におけるクロロフィル a と b の配置が、エネルギーを効率的に伝達する「集光」と余分なエネルギーを逃す「光防御」という二重の機能を効果的に制御するために、重要な役割を果たしていることを明らかにしました。
また、植物の細胞内にある「葉緑体」の中には、「チラコイド膜」という平な袋状の構造があります。私たちは、この膜の形成に関わるタンパク質が、細胞全体の分裂や葉緑体の分裂を強調させるという、未知の役割を持つことも突き止めました。
緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)野生株とCurT欠損変異株細胞のクロロフィル蛍光イメージ
これは、光合成生物の細胞増殖における普遍的なメカニズムの解析に大きく貢献する成果です。
将来的に、農作物や藻類の細胞分裂や葉緑体分裂を最適化して光合成能力を向上させることができれば、食料増産やバイオマスエネルギー生産及び二酸化炭素削減の効率化につながる革新的な技術開発が期待できます。
学際的なアプローチで解明する、光合成の知恵
自然科学の研究は、自然界のことを明らかにすることです。そこには、人類の知識を蓄積していくという意義と、未知の現象を理解する知的な楽しさがありますが、同時に研究を通じて社会に貢献することも重要です。
私は将来、「改良光合成生物」や「人工光合成システム」の開発に知見を生かしたいと考えています。どんな環境でも柔軟にシステムを書き換えて生き抜く植物の知恵を解明できれば、環境に合わせて自律的に効率を最適化する「人工装置」をつくれるかもしれません。
植物のミクロな世界には、未来のエネルギー・環境問題を解決するヒントが詰まっています。
光合成調節の分子メカニズムの解明は、生物学・物理学・化学が交差するテーマで、生理遺伝学、生化学、生物物理学を専門とする他大学や国立研究所の研究者が協力し合い、研究を進めています。今後も、生物物理化学・構造生物学・理論物理学の知見を融合させた学際的なアプローチによって、集光アンテナタンパク質の未解明な側面を明らかにしていきます。