薬学・環境衛生学

身近な化学物質の「危険」を探せ!

日本大学 薬学部 薬学科 環境衛生学研究室 中嶋 順一 教授

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この記事でわかること

薬や食品、身の回りの環境には、私たちの生活を支える化学物質がたくさんあります。一方で、健康に影響を与える物質もあります。
日本大学薬学部の環境衛生学研究室では、食品や医薬品、環境に含まれる化学物質の安全性を調べる新しい方法を研究。特に、有害な「ヒ素」を簡単・高精度に測定する方法の開発に挑戦しており、菌がつくる有害物質や化学物質による健康被害の原因も探究しています。
薬学の力で、人々の健康と食の安全を守る研究です。

私たちの身の回りには、たくさんの「化学物質」があります。
薬や食品にもさまざまな化学物質が含まれていて、病気を治したり、私たちの生活を便利にしたりしてくれます。

でも、ちょっと待ってください。

便利な化学物質にも、使い方によっては健康に影響を与えるものがあります。
たとえば、発がんやアレルギーなどにつながる可能性があるものもあります。

では、どうすれば化学物質から私たちの健康を守ることができるのでしょうか?

その答えを探しているのが、日本大学薬学部の環境衛生学研究室です。
ここでは、野外や室内、さらには私たちの体の中にある化学物質、医薬品や食品に含まれる物質について、「安全なのか?」「どんな影響があるのか?」を確かめるための新しい試験方法を研究しています。

数千万円の機械を使わずに『ヒ素』を測定するには?

有機物を燃焼させ、ヒ素などの無機物のみとする機器

有機物を燃焼させ、ヒ素などの無機物のみとする機器


研究テーマのひとつが、自然界にも存在する有害な重金属、「ヒ素(ひそ)」です。
植物や鉱物を原料とする生薬や漢方薬では、ヒ素が混ざっていないかを確認することが大切です。

ところが、重金属を調べるための分析機器は、とても高価。
なんと数千万円するものもあります。
これでは、どこでも簡単に検査するというわけにはいきません。

そこで研究室では、もっと簡単に、しかも高い精度でヒ素を調べられる方法をつくろうとしています。
ヒントになったのは、以前の研究で使っていた水質検査用のヒ素測定キット。
これを応用して、できるだけ手軽に、高精度の結果を得られる試験方法を目指しています。

この研究には、さらに大きな可能性があります。
たとえば、ほかの重金属にも同じ方法を応用できるかもしれません。
研究室では、将来的にこうした分析方法が世界の食料の安全性を守ることにも役立つ可能性を考えています。

農地が重金属で汚染されてしまうと、そこで育てた食べ物にも影響する可能性があります。
だからこそ、「土や食べ物に危険な物質が入っていないか?」を調べる方法は、とても重要です。
高価な機器がなくても調べられる方法を開発できれば、さまざまな場所で食品の安全を確保することにつながるかもしれません。

「食べ物の中の菌」も研究対象!

研究室が調べているのは、化学物質だけではありません。
天然素材や製品に含まれる菌や、菌がつくり出す有害な物質についても研究しています。
食品などによる健康被害を繰り返さないためには、「何が原因なのか?」を正しく見つけることが大切だからです。

さらに、研究室では学生たちも、それぞれ興味を持ったテーマに挑戦しています。
ある学生が取り組んでいるのは、溶剤を扱う工場で膀胱がんが多発したケース。
「なぜ、このようなことが起きたのだろう?」
原因を探るため、化学物質が体の中でどのような影響を与えるのかをさまざまな角度から考えています。

研究室で大切にしているのは、先生が答えを教えることではありません。
学生自身が「これが気になる!」と思ったテーマについて先生と話し合い、自分で答えを探していくことです。
もちろん、研究はいつも順調に進むわけではありません。
「予想と違う結果になった!」
「どうしてこうなるんだろう?」
そんなこともあります。でも、だからこそ面白い。
試行錯誤を繰り返し、自分の力で問題を解決できたときには、大きな喜びがあります。

身近な食品や薬、環境の中に潜んでいる「健康へのリスク」。
それを見つけ出し、安全な未来につなげる。
環境衛生学には、病気を治すだけでなく、人々の健康を守るという大きな役割があります。
「なぜ?」を追いかけるのが好きなら、あなたも環境衛生学の世界で、まだ誰も知らない答えを探してみませんか?

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