ディスカバ!

探究学習に悩む高校の先生へ

桜美林大学 ディスカバ!事務局 コーディネーター 今村 亮さん 谷川 清夏さん

この記事でわかること

高校の「総合的な学習の時間」が「総合的な探究の時間」へと一歩を踏み出してから、まもなく丸3年。
依然としてテーマ設定や教材探し、専門外の指導、そして何よりも教員の業務負担が大きな課題になっているなか、年間延べ4万人以上の高校生が活用するキャリア支援のプラットフォーム「ディスカバ!」が注目されています。
ディスカバ!は高校に出向く出張プログラムも提供して、探究学習に悩む学校に寄り添います。
生徒に伴走する大学生(メンター)など、ディスカバ!の魅力について事務局の今村亮さんと谷川清夏さんにお話を伺いました。

高校生の探究の機会を大学がつくる

「ディズニーの新企画を考えよう」「未来の自動車をマーケティングしよう!」「貧困を解決するはじめの一歩とは?」
ディスカバ!が実施するのは、10代が自分の可能性を見つけるためのプログラムです。年間150日ほどかけて、約60種類のプログラムを大学のキャンパスで開催しています。
グループワークや個人の探究で導いた答えをプレゼンテーションする高校生の姿は、まるで大学のゼミ生のよう。ほかにも入試に向けて望動機や自己PRの書き方を教える自己探究プログラムなどもあります。

桜美林大学ビジネスマネジメント学群の人気授業「テーマパーク論」を高校生が体験する探究プログラム「Disneyの新企画を考えよう」。桜美林大学のキャンパスで1日もしくは3日間(毎日10時から16時)、過去の商品の傾向を分析してヒットの法則を導き出す

桜美林大学ビジネスマネジメント学群の人気授業「テーマパーク論」を高校生が体験する探究プログラム「Disneyの新企画を考えよう」。桜美林大学のキャンパスで1日もしくは3日間(毎日10時から16時)、過去の商品の傾向を分析してヒットの法則を導き出す

アパテックモーターズの協力のもと、電気自動車のマーケティングを考えるプログラム。3日間のプログラムでは試乗も体験する

アパテックモーターズの協力のもと、電気自動車のマーケティングを考えるプログラム。3日間のプログラムでは試乗も体験する


ディスカバ!を立ち上げた今村さんは、「私たちが届けるのは、未来を体験する『答えのないプログラム』です」と話します。
このキャリア支援プログラムが誕生した背景には2010年代のAO入試があります。当時、桜美林大学の入試部門に関わっていた今村さんは、高校生の課外活動の幅に限界を感じていました。そして、「高校に機会がないのなら、大学側がつくればいい」という桜美林大学入学部長の言葉をきっかけにディスカバ!が生まれました。
「2019年に桜美林大学の高大連携プロジェクトとして立ち上がり、翌年に法人化して株式会社DISCOVERY STUDIOになりました。桜美林大学と二人三脚で、全国の大学と高校を結びつけています」と話します。


プログラムは大学のキャンパスで開かれ、そこに高校生が自主的に参加しますが、ディスカバ!が高校に出向く出張授業もあります。出張授業は「総合的な探究の時間」などを利用して教室や体育館で開催され、2024年度は全国66の高校で250日近く行われました。

「出張ディスカバ!」はこちら

高校生に寄り添い、問いを導き出すメンター

ディスカバ!のプログラムを運営するのは、教育コーディネーターと呼ばれる事務局スタッフです。そのひとりである谷川さんは、「私たちはプログラムの開発や運営を行いますが、現場の主役はあくまでも大学生のメンターです」と話します。


約100名の大学生がメンターとして高校生に伴走するのが、ディスカバ!の大きな魅力です。「本当に意欲と熱意のある学生が全国から集まっていて、高校生に対して真摯に向き合いながら学びを引き出しています」と谷川さん。メンターは、高校生から疑問を導き出し、問いを深める役割を担っています。


しかし、出張授業で受け身の高校生に問いを立ててもらうのは簡単ではありません。
「やりたいことが見つからない生徒にしたら、探究学習はすごく辛い時間です。『探究で困っていることある?』と生徒に尋ねても、ほとんどが『ないです』の一言で終わります。」と谷川さん。
そこで、メンターたちは「ふでばこカワイイね」といった日常の会話で心の距離を縮めていきます。「アクションを起こさなければ学びは止まってしまうので、『どんどん話しかけようよ!』と私たち教育コーディネータはメンターの背中を押しています」(谷川さん)

メンターは、まず高校生と仲良くなることをめざしている

メンターは、まず高校生と仲良くなることをめざしている


冷えきった教室の温度を上げていくメンターたち。彼らのほとんどは、高校時代にディスカバ!に参加した経験を持っています。「そこで出会ったメンターへの憧れがあるようで、自分も頼もしい先輩になりたい、という思いを強く持っている学生が多いです」(谷川さん)
メンターの採用募集は年に1度1ヶ月間だけですが、毎年たくさんの応募があり、現役メンターたちの審査によって選ばれています。新メンターになると、高校生の気持ちやディスカバ!での経験が褪せない卒業前に研修がはじまります。

熱意ある先生を独りにさせない

今村さんは、「探究学習に意欲的に取り組む高校は少ない」と言います。
「学習指導要領に基づいて科目を設置したものの、教員はすでに多忙を極めています。十分な情熱や時間を注げないので、ある意味で当然の現状です。しかし、授業が面白くなければ生徒もやる気が出ないという悪循環が生じて3年間が無駄になります」

高校がディスカバ!に相談する時は、すでに探究学習が不人気科目になってしまっていることも珍しくなく、関わるすべての先生方から話を聞いて状況を把握することからはじめています。
「もちろん、『なんとかしたい』という思いを抱く先生はいろいろな学校にいます。でも、頑張るほど周囲に敬遠されて、孤独を感じています」と今村さん。ディスカバ!では、高校教員向けの研修プログラムも実施していて、そこでは先生同士が情報を共有し、自分の学校を動かすヒントを見つけています。

「探究学習をどのようにやるか決めずに生徒が生殺しになっている学校が一番不幸です。明確な意思決定を持って教室に挑むべきです」(今村さん)「どんな悩みでもディスカバ!が受け止めます。困っている先生はいつでも連絡ください」(谷川さん)

「探究学習をどのようにやるか決めずに生徒が生殺しになっている学校が一番不幸です。明確な意思決定を持って教室に挑むべきです」(今村さん)「どんな悩みでもディスカバ!が受け止めます。困っている先生はいつでも連絡ください」(谷川さん)

「教職員向け研修プログラム」はこちら

ディスカバ!では、年間を通じて学校全体の探究学習に伴走することもしています。
そのひとつである昭和学院高等学校(千葉県市川市)では、1年生はグループでディスカバ!が用意したテーマに取り組み、2年生からは自分で問いを立てていきます。毎週水曜日は大勢のメンターが昭和学院にやってきて、校内中で生徒に伴走。教員はメンターと生徒とのやりとりから多くの気づきを得ています。
谷川さんは、「1年生を見ているとディスカッションがどんどん上手になっていくのがわかります。積極的に自分の考えや聞きたいことを言えるようになり、多くの生徒が翌年からひとりで問いを立てています」と話します。1年で探究学習の導入が成功すると、2年以降は個人の探究がどんどん進んでいくそうです。


昭和学院高等学校の探究学習の記事はこちら

自分の指針や軸となるものを手にいれる

現在、次期学習指導要領(2030年度)の検討が始まっています。2025年9月に公表された「論点整理」では、基本的な考え方として「主体的・対話的で深い学びの実装」「多様性の包摂」「実現可能性の確保」の3つが方向性として提起されました。

今村さんは、「探究を導入した成果が果たしてどうだったのか。ただでさえ忙しかった高校の現場には厳しかったんじゃないか。そんな議論がされていることからも『実現可能性の確保』がすごく重要です」と話します。
そして、「高校教育の深い学びを実現させるためには仲間が必要です。そのひとつが大学との連携だと思っていて、私たちは、全国の大学が少しずつ力を貸せる状況づくりをめざしています」と力を込めます。

高校の探究学習と大学の学びは深い関係にあります。大学進学を考えている高校生にとって、探究学習は専門分野や大学を見つけるきっかけになり、年内入試の助けにもなっています。
「探究力が入試につながる大学は増えていて、桜美林大学でも、ディスカバ!のプログラムの修了証や認定証を提出することで書類審査を免除する『総合型選抜探究入試Spiral』を設置しています」(今村さん)

探究入試Spiralで入学した学生の記事はこちら
(記事公開時に「こちら」の文字から小野寺ゆめさんの記事に遷移する形になります)

最後に、「探究学習とは?」と今村さんに尋ねると、「自分の学びたいテーマに出会うこと」と答えが返ってきました。
将来につながるテーマを模索することは、これからの自己のあり方や生き方につながっていきます。探究学習は、高校を卒業する前に自分の指針や軸につながるものを手に入れる貴重な機会。そんな高校生の大切な時間をディスカバ!が豊かにしていきます。

おすすめの記事

公式SNS

「DAIGAKUガクモンクエスト」公式SNSをフォローして、最新記事を常にCheckしよう!