航空宇宙工学

宇宙開発の歴史に刻まれた、超小型衛星「てんこう2」

日本大学 理工学部 航空宇宙工学科

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日本大学理工学部の奥山研究室が開発した超小型衛星「てんこう2」は、学生が主体となって設計・試験・運用を行っています。この度、宇宙への放出と軌道上での作動に見事に成功し、大きな話題になりました。
この成功が宇宙開発の歴史において画期的なのは、従来の国際宇宙ステーション(ISS)からではなく、日本の新型補給船(HTV-X)によって、より高度な宇宙で放出が行われたからです。
ISSに頼らない自由なタイミングでの放出証明は、今後の超小型衛星利用における新たな需要創出として期待されています。

「てんこう2」をご存知ですか? 日本大学理工学部航空宇宙工学科の奥山研究室が開発した超小型衛星で、学生が主体となって設計・試験・運用を行っています。以前の記事では、宇宙でのミッションをご紹介しましたが、この度、ついに「てんこう2」が宇宙に放出され、その成功が大きな話題となりました。

奥山研究室による小型衛星開発を紹介した記事はこちら

理由は、従来の国際宇宙ステーション(ISS)からではなく、日本の新たな補給船がISSよりもさらに高い高度で放出したからです。
日本の宇宙開発の新たな1ページを刻んだ「てんこう2」の宇宙の旅。それがどれほど画期的な挑戦なのか、詳しくお届けします!

「てんこう2」フライトモデル

「てんこう2」フライトモデル

新型補給船HTV-Xの実力を証明する「最初の衛星」

2025年10月、日本の基幹ロケット「H3」が種子島宇宙センターから打ち上げられました。
搭載されていたのは、新型宇宙ステーション補給機「HTV-X」の1号機です。「こうのとり(HTV)」の後継機として開発されたHTV-Xは、これまで以上に大量で鮮度の高い物資を輸送することができる、日本最大級の宇宙船です。

さらに画期的なのは、HTV-Xは物資補給の任務を終えた後もすぐに大気圏には突入せず、最長1年半、宇宙で技術実証を行うことができます。ISSを離れた後は、宇宙技術を獲得するためのプラットフォームとして活躍するのです。

初の試みとなる1号機には、3つの技術実証のミッションが課されましたが、その1つこそが、ISSを離脱した後に高度を上げて高度500kmの宇宙空間へ「てんこう2」を放出することでした。

HTV-X1号機 技術実証ミッション(写真提供:JAXA)

HTV-X1号機 技術実証ミッション(写真提供:JAXA)


JAXAは大学などに対し、ISSの日本実験棟「きぼう」からの放出機会を提供していますが、高度400kmのISS軌道では、わずかに残る地球の大気抵抗によって、衛星は半年から1年ほどで落下してしまいます。しかし、より大気の影響が少ない高度500kmであれば、太陽活動や衛星形状等により寿命は変化するため、数年規模の長期運用が期待されます。

このミッションが持つ意味は極めて重大です。
ISSの運用計画に依存することなく、日本のロケットと日本の補給船の力だけで衛星を希望する軌道へ投入できることを世界に証明したからです。これにより、今後の超小型衛星利用における新たな需要の開拓が期待されます。

「てんこう2」は、HTV-X1号機による新たな衛星放出実証ミッションの最初の衛星として選定され、その期待に見事に応えてみせました。奥山研究室の学生たちは、大きな責任と期待を背負いながら、軌道投入後にCWビーコンの受信に成功し、主要システムの健全性を確認しました。

JAXAの筑波宇宙センターにて。衛星放出ケースへの収納作業を完了した奥山研究室のメンバー(写真提供:JAXA)

JAXAの筑波宇宙センターにて。衛星放出ケースへの収納作業を完了した奥山研究室のメンバー(写真提供:JAXA)

HTV-X1号機 技術実証ミッション[CG](写真提供:JAXA)

HTV-X1号機 技術実証ミッション[CG](写真提供:JAXA)

宇宙開発は挑戦の連続! 未来へつなぐ学生たちの情熱

「てんこう2」は、いまも高度500kmの軌道上で独自のミッションを続けています。
将来の宇宙開発につながる最先端材料や先進通信技術の実証実験だけでなく、日本大学芸術学部や20校を超える付属高校と連携した教育プロジェクト「N.U Cosmic Campus」という、文理や学校を超えて宇宙を楽しむ試みも展開されています。

奥山研究室の奥山圭一教授は、次のように語ります。
「困難に真摯に向き合い、失敗から学び続ける姿勢こそが次世代の技術者を育てると信じています。学生たちはこの精神を胸に、設計から運用までの全工程に情熱を注いできました。この小さな衛星に込められた挑戦と経験が、将来の宇宙開発を担う若者たちの大きな成長につながることを心より願っています」

もちろん、プロジェクトに関わった学生たちも、その喜びを噛み締めています。
「宇宙開発は、失敗や挫折から学び、ひとつひとつの成功を積み重ねる営みです。私たちも超小型衛星で確かな成果を未来に残したいと思います。そして、この小さな衛星から得られる経験と知見が、将来、人類が月や火星へ活動領域を広げていくための礎となることを願っています」

「てんこう2」の成功は、次世代の宇宙開発を担う学生たちに、計り知れない自信と大いなる経験をもたらしました。

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