宇宙工学

青い地球が撮れた! 千葉工大生が挑んだ超小型衛星プロジェクト(後編)

千葉工業大学 高度技術者育成プログラム

この記事でわかること

千葉工業大学の学生たちが設計・製造し、宇宙空間へ放出後の運用にも携わる超小型衛星「BOTAN」の運用が、ついに始まりました。
2021年度から受け継がれるこのプロジェクトのチーム名は「GARDENs(ガーデンズ)」。歴代の衛星には「YOMOGI」「KASHIWA」「SAKURA」と花の名前がつけられ、4機目のBOTANには「先代の衛星の開発経験と功績・尊敬を花弁に見立て、大きな花を咲かせられるように」との願いが込められています。
庭園で力強く草花が育つように、学生たちもプロジェクトを通して育ちました。卒業後はどんな花を咲かせるのでしょうか? 

男子メンバー2名が語る後編です!

はじめまして。機械電子創成工学科4年の押田卓人です。
誰もが全力を尽くしたBOTANプロジェクトの後半をお届けします。

超小型衛星のプロジェクトは、工学の複数分野に関われるだけでなく、ビジネスマナーやコミュニケーション能力、ドキュメント作成能力なども身につけることができます。
僕は、3年次からの研究分野や将来の目標を見つけようと参加しました。そして、「BOTANの生命線」ともいえるアンテナを担当して、無線電波を管理する総務省ともやりとりを行いました。

宇宙で確実に動く衛星を!

BOTANのアンテナは地球と宇宙をつなぐもので、アンテナを通してミッションのすべてのデータが千葉工大に降りてきます。本体側面に丸めて格納したアンテナが宇宙で展開できなければBOTANはただの箱となり、一ノ宮さんが担当したカメラも井口さん苦心のジャイロセンサも無駄になります。絶対に失敗はできません。

格納されたアンテナキャプション。軌道投入後、展開機構と金属の復元力によって開く

格納されたアンテナキャプション。軌道投入後、展開機構と金属の復元力によって開く


ところが、2024年4月、放出された2号機KASHIWAからの信号を受信することができませんでした。アンテナがうまく展開されなかったようです(その後、無事に開いてミッションを達成しました!)。
その頃、僕たちはFM(フライトモデル)の制作に取りかかっていたのですが、「BOTANではどう改修するか?」とチームで議論になりました。「宇宙で確実に動くものをつくる」のがGARDENsの目標ですから、ここで大きな壁に当たりました。
僕は、試行錯誤しながらアンテナの展開機構に関する調整を行いました。長い時間をかけて試験を重ね、−20℃から+60℃の環境でもテストを行いました。

無事にアンテナが展開して、嬉しかったというよりもホッとしています。

アンテナが展開した状態のBOTAN

アンテナが展開した状態のBOTAN

受け継がれていく知識と経験

このプロジェクトは誰にとってもはじめてのことばかりでした。
2種類あるアンテナは周波数に合わせて基板の配線の太さを計算しなくてはならないのですが、それは学科の学びとは全く異なりました。それ以前に、当時は基板に関する知識はゼロでした。
他のメンバーも同じで、一ノ宮さんはハードウェアに戸惑いましたし、井口さんはセンサの概念から勉強していました。

それでも僕たちが諦めずにやり通せたのは、研究室には2号機や3号機を手がける先輩たちがいたからです。先輩や先生、大学院生など、多くの人に支えられて、メンバーは技術や知識を自分のものにしていきました。

もちろん、行き詰まることはたくさんありました。
一人ひとりが必死になってつくった部品は、個々ではうまく作動しても組み立ててみると問題が出ました。バラして原因を探り、改修して再度組み立てるのですが、今度は違う問題が発生します。九州工業大学での試験が迫るなか、それを繰り返した頃がチームとしてもっとも苦労していた時期でした。

そしていま、大学で宇宙に関わるとは夢にも思っていなかった僕は、大学生でも宇宙に衛星を飛ばして自分たちで運用できることのすばらしさを実感しています。
このプロジェクトでの経験は宇宙開発の分野だけでなく、高度な技術力とチームワークが求められるあらゆる分野に通じています。卒業後はみんな、ここで得た力を社会で活かしていくと思います。

では、最後に大森くんがお話しします!

BOTANの命「デプロイメントスイッチ」

機械電子創成工学科4年の大森幹太です。

宇宙系の研究室に入りたくて千葉工大を選んだ僕は、大学からのメンバー募集メールを読んで「これはやるしかない!」と参加しました。緊張もありましたが、楽しみやワクワクの方が大きかったです。


僕は、押田くんが手がけたアンテナをはじめ、メンバーがつくった部品を組み立てて最終型にしました。
サイズ、質量、素材、設計など、物理的にも非常に厳しい制約があるなか、特に衛星の命を握る「デプロイメントスイッチ」の扱いが大変でした。
デプロイメントスイッチは、放出前は衛星の機能をオフ状態に保ち、放出後は電源を入れてアンテナを展開するなど、非常に重要な役割を担っています。1ミリ以下の精密さで製造されていて、3つのスイッチのうち1つが壊れてもBOTANの電源は入りません。
組み立てる時はとても緊張し、完成して引き渡した後は「JAXA(宇宙航空研究開発機構)やNASA(アメリカ航空宇宙局)の人たちは、BOTANを丁寧に扱ってくれているかなぁ」と心配していました(笑)。

デプロイメントスイッチ(囲い部分)。BOTAN底面の3つの角にそれぞれ付いている。

デプロイメントスイッチ(囲い部分)。BOTAN底面の3つの角にそれぞれ付いている。


ISS(国際宇宙ステーション)からBOTANが放出される時、GARDENsのメンバーはそれぞれいろいろな場所にいました。
茨城県のJAXA筑波宇宙センターで、「きぼう」運用管制室から放出コマンドを送信するのに立ち会った人もいますし、僕のようにキャンパスのパブリックビューイングで見た人もいます。
放出された時は、みんなほっとした感じでしたが、後日、撮影データを復元して地球が写っていた時は、「おーっ!」って盛り上がりました。

社会という新しい宇宙への旅

プロジェクトはまだ終わっていませんが、ここまでBOTANを通して地球が丸いことや青いことが実感でき、すごく満足しています。自分たちの手で地球を外から撮影できたことで、より宇宙が身近になりました。

BOTANからの画像データをつないで現れた地球の一部

BOTANからの画像データをつないで現れた地球の一部


このプロジェクトは、メンバーのこれからのキャリアに大きな意義を与えたと思っています。

わからなくても調べたり相談したりすることを学んだ井口さんは、卒業後は組み込みハードウェアのシステムエンジニアになる予定で、「社会で困難に直面しても、ここでの経験を活かして乗り越えたい」と言っています。


一ノ宮さんは、身につけたコミュニケーション力や文章力を活かしてメディア業界で働く予定です。


押田くんは、自動制御機器メーカーに就職する予定で、「つくるものは違うけど、『完全に動くものをつくる』という考え方や品質管理の考え方は活かせる。英語を含めてコミュニケーションの取り方も身についた」と話しています。


僕は、希望通り3年次に宇宙系の研究室に所属しました。いまは、BOTANで使った材料の低コスト化を研究していて、卒業後は宇宙産業に携わる企業に就職する予定です。
入学した時に描いた夢がかなり叶っていて、プロジェクトに参加して本当に良かったです。



高校生の皆さんには、大学に入ったら興味のあることに迷わずチャレンジすることをおすすめします。「参加したら何かできるかもしれない」という気持ちで、どんな機会も逃さないでください!



前編の記事はこちら

工学部 趙 孟佑先生の解説記事はこちら

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